使い方:
解説:
【ポテンシャルと温度】
モード毎の平均運動エネルギーが kT であり、逆にこのことによって温度が定義される。そのことの検証の一環になります。
上のことが言えるためには、少なくとも、各モードの運動エネルギーが同じ値になっていくのでなくてはいけません。
エントロピーは極大に向かう。だから、閉鎖系では、全体の温度が一様になっていくと言われます。
しかし、ポテンシャル場が存在する場合にもこれは事実でしょうか?
気体は断熱膨張や圧縮で温度が変わります。大気が上下で入れ替わるとき、上に移動する空気は膨張するので、上空の空気は冷えたものになります。
気流を作るもとは太陽などのエネルギーかも知れませんが、温度を持つ以上、気体の粒子は絶えず運動しており、結果、上下の移動がおこります。
それは温度勾配の原因にはならないんでしょうか? この疑問が今回のシミュレーションの動機です。
【シミュレーション結果の分析】
左右領域の間にポテンシャルギャップを設けた今回のシミュレーションは、分布の広がり、つまり温度が一様になることを支持しています。
まずは、veloc-x をチェックした状態の結果を見てみます。設定粒子数を少なくするか、balls-collide のチェックを外した状態で、次のようになります。
x 方向の運動分布
このグラフを良く見ると、上の線(シミュレーションの左側領域の結果)の緑の縦線以降のギザギザと、下の線(シミュレーションの右側領域の結果)のゼロから始まるギザギザとが
良く似ていると思いませんか?
それもそのはず。
上の線で緑の縦線より左の領域のものは、エネルギーが低いので、ポテンシャルを乗り越えて右側領域には入れず、折り返し、
緑線より右の(運動エネルギーが大きい)ものは入れますが、その際、ポテンシャルギャップだけのエネルギーを失います。
この結果、上の線の一部を除いて、そのまま左に並行移動したものが、下の線にほぼ一致するようになります。
次に、veloc-y をチェックした、y 方向成分の結果を見ます。
balls-collide はチェックし、設定粒子数を多めにすると、次のように顕著に見えます。
y 方向の運動分布
この場合は、先ほどのような(横の)相関は見てとれず、むしろ、グラフの上下の位置関係で似ています。
すなわち、y 方向の運動量を持つ粒子は、左から飛んできて、一定の確率で右に入ることができますが、この確率は、y 方向の運動量とは無関係です。
勿論、右から境界に入ってきて左に抜けるものもあります。
ですので、確率は減じられるとは言え、(解析領域の)左右の事象は相関します。
上の線(左側領域)の y 座標値に、入射できる一定の確率を掛け算したものとして、下(右側領域; 緑)の線があります。
先ほどは並行移動だったので、(グラフの x 軸上の)引き算でしたが、今度は、(グラフの y 軸上の)掛算ということになります。
理由はどうあれ、どちらの成分も、左右両領域共に、
結論として、断熱膨張、圧縮による温度変化、温度勾配の生成は、熱運動による粒子移動では起こらないと言えます。
なぜなら、運動エネルギーの広がりそのものが温度だからです。