レンズの中心がフィルム中心の正面にあるとは限らない、また、レンズの軸がフィルム面に垂直とは限らない、こんなカメラにおける像の出方の話です。
そういう「あおり」の用途は、焦点面を制御する(集合写真で前列の座った人と、後列の立った人の顔に、一様にフォーカスする) ために使うこともあるのですが、今回ピントの話はせず、像の位置、形だけを問題にします。 ピンホールカメラと思って頂いて良いです。
図において、緑の線が交差するところに、レンズなりピンホールが存在すると考えます。 左に周期的な模様が書かれた無限の壁があります。 フィルムは太い黒線で書かれた部分ですが、これは無限に延長して考えることもでき、そこに得られた像がチャートの右(スクロールバー領域の左)に示すものです。 白く抜けたところがフィルムと考えて下さい。 像は本来、上下反転するのですが、それだとイメージしにくいので、さらに反転して正常に戻しています。
各スクロールバーの機能をご説明します。 「focus-length」はレンズとフィルムとの距離を変えるものです。 レンズ自体を調整するのかどうかというのは、そう考えても良いし、そう考えなくても良いです。 だいたい、昔のカメラのレンズというのは、光を集めて、ピンホールカメラを多少ましにするためのものという性格があります。
「camera-x」は、カメラと壁の距離を、「camera-y」は、カメラの上下方向の位置を、「camera-angle」は、カメラの上下方向の向きそれぞれ動かします。
「afine-1」と「afine-2」とは全体のアフィン変換で、得られる像に変化はないです。 「film-size」はフィルムのサイズを動かしますが、焦点距離も比例して動かすので、画角、すなわち小型カメラ換算の何ミリといったことは変わらず、 これも像への影響はないです。
この系というのは、フィルム上端、フィルム下端、レンズの3つの位置だけで全てが決まり、それぞれ x と y なので、合計6自由度です。 ここに設けた7個のスクロールバーで、これだけの自由度の要求には十分答えられます。 にも拘らず、後の3つは無影響、ということは、一次元の「あおり」変換の自由度は4ということになると思います。
フィルム上には、無限遠までの像が終わってしまう「地平点」があります。 また、実物(壁)に関しては、例えフィルムを無限に延長しても移すことができなくなる、「撮影限界点」があります。 それぞれの位置がどこか、また、フィルムの傾きがどうであって、レンズから壁までの距離がどうか、この4つの変数が、得られる像を決めることになると思います。 ということは、もともとの4つの点がどこに移されるかの情報から、写像の全体が知られるということでしょう。
カメラの角度を大きく回すと、ソフト上の像の左側に青い線が入って来ることがあるかと思いますが、これは上述の「地平点」を越えた、虚像の範囲を示します。 カメラの本来の像は、実物とフィルムとがレンズを挟んで反対側になければいけないのですが、 この順序が変わっていて、それでもレンズとフィルムとを結ぶ延長線上に実体がある場合を「虚像」としています。
この「あおり」変換は、アフィン変換のスーパーセットです。 ただし、アフィン変換は「群」ですが、「あおり」変換は「群」ではないと思います。 そうは言っても、特殊な点を除き、(虚像も許容するなら)逆変換が存在します。 変換を複数回繰り返した結果は、それより少ない回数の変換では到達できないのが普通です。 また、変換を複数回繰り返した結果からの逆変換も、同じ回数だけの変換を経ないと戻せないのが普通だと思います。 この辺、「群」の演算とは違うところで、「群」に慣れていると却って戸惑います。 ただし、「あおり」変換の複数回の適用を許した全体は群になるかも知れません。
次回は建築パースや、絵画の遠近法とも関連が深い、二次元の「あおり」変換についてご説明します。