球面上の三角形で、各辺は球面上の「直線」であって、それは「大円」である。 地球儀で言えば、各経線は「大円」だが、緯線は赤道のみが「大円」である。 「重心」は、各辺の中点と対角を結ぶ線が交わる一点である。 「中点」は距離において頂点の半ばにある点ということだし、それと対角を結ぶ線も「大円」ということで問題なく定義できる。 しかし、ここで出てくる三本の「中線」は、そもそも一点で交わると決まっているのだろうか? 平面図形の場合は、そうなるのだけれど、球面でもそうだろうか?
球面上三角形の、例えば辺 A-B の「垂直二等分線」は、距離 AP と BP とが等しい点 P の集合である。 また、辺 B-C のの「垂直二等分線」は、距離 BQ と CQ とが等しい点 Q の集合である。 二つの線の交点 O においては、AO と BO とが等しく、BO と CO とが等しいわけだから、AO と CO とは等しい。 それは、辺 C-A の「垂直二等分線」上のものでなくてはならない。 こうして、球面上でも「外心」が一意のものとして存在することは示せる。
こうして一意に決まる「外心」O で接する唯一の面に、もともとの三角形を投影する。 この場合、辺の中点は投影された平面図形においても中点になる。 だから「中点」と各対角とを結ぶ「中線」も、投影された平面図形において同じ役割を持ち、それらは「重心」で交わる。 これが球面図形の投影であるから球面上でも三本の線は一点で交わる。 二頂点が球の対極にある場合にはそうならないが、そもそもその場合は「三角形」にならない。